新型コロナウイルスに直面して 施設長 北山 泉
世界中が新型コロナウイルスの脅威に揺れています。世界保健機関(WHO)では3月に流行をパンデミックと発表しています。日本でも都市部を中心に感染者が急激に増えています。すでに北海道では特措法に基づかない独自の緊急事態宣言が行われています。蔓延防止のために不要不急の外出や3密の重なる場の回避等が求められています。
このように新型コロナウイルスの脅威は未だ収まる兆しを見せません。私たちには引き続き気を緩めずに対策することが求められています。長期戦を想定し、これからどのように日常生活を送ればよいのかしっかりと考えなければなりません。
特に、私ども社会福祉施設において感染拡大防止のための取組の徹底が図られています。当法人のように知的障害のある自閉症者を主とした施設では、その障害特性により症状の把握や医療の利用、特に、検査や治療等に困難さや制約が加わってしまいます。入院が必要となるともっとハードルが高くなるのが現状です。その中でも、高齢者や基礎疾患のある人は重症化しやすく、特に感染を防ぐ必要があります。環境面から捉えると、施設内の環境は、換気などに気をつけていてもどうしても密閉・密集・密接の3つの密が重なりやすく、施設でのクラスター(集団感染)が起こりやすい状況にあります。
船橋市にある障害者支援施設で発生したクラスター(集団感染)では、入所者は環境変化による負担を考慮し、入院加療を要する方以外は施設内で治療を受けて、日頃行っていた活動は休止し、一人ひとり個室で生活し、職員は、マスク・ガウン・手袋といった衛生用品を身に着け、手指消毒を徹底する等、衛生管理を徹底しながら支援にあたっていると報道されています。また、施設の運営にあたっては、施設職員の感染者も多数いるため、市から看護師、保健師、事務職員が派遣され、支援を行っており、また、県の協力により医師、看護師が継続的に派遣されていることも報道されています。
本施設においても、こういう事態が起こりえる可能性があることを想定し、利用者及び職員等の衛生管理を徹底し、新型コロナウイルスを施設内に持ち込まないという強い決意のもとで対策に取り組んでいます。定期的に感染症対策委員会を開催し、行政の指示に基づき、また、皆様の協力をいただき感染症対策を講じています。幸いにも、現在まで利用者及び職員等から感染者は一人も出ていません。終息の見通しが全く立たない中、今後も油断せずに引き続き必要な対応をしっかりと講じていきたいと考えています。
入所の利用者につきましては、高齢の方や基礎疾患が見られる方が多く、不自由ではありますが可能な限り外部との接触を制限しています。入所と通所の利用者及び職員等の完全分離や帰省及び外出や面会の制限、正面玄関の施錠にともなう玄関先での来訪者対応、職員玄関を別に設定等を実施しています。他に、利用者に対しては、早期発見のため全員を対象に一日2回の検温の実施、可能な利用者にはマスクの着用、こまめな手洗いと手指の消毒の支援の実施等を徹底しています。環境に対しては、施設内の毎日の定期的な清掃と消毒、換気等の実施を徹底しています。職員に対しては、マスクの着用とこまめな手洗いと手指の消毒の実施、出勤前の検温と症状確認の実施とその結果による就業制限の実施等を徹底しています。ご家族に対しては、文書による新型コロナウイルスについての情報提供や利用者の状態、施設で実施している対策等の報告を実施しています。さらに、電話によるコミュニケーション、情報の伝達や交換を実施しています。
一方、所属単位においては、利用者間の交流に制限は加えておらず、できるだけ普段の生活や日課を継続する努力をしています。様々な制約はありますが、できるだけ従来の活動実施に努めています。一時、中断していた活動も再開する予定でいます。これからの季節は外部との接触に十分に配慮し、できるだけ外に出る機会を確保して行きたいと考えています。しかし、外部の施設の利用は、引き続き必要最低限にとどめることとなります。週末のおやつは一人一人の嗜好に合わせて職員が購入し提供しています。また、所属単位において、施設内でできる簡単な行事の実施に心がけています。なお、理美容については、幸いにも美容師としての資格、経験のある職員が施設内で対応しています。このような状況下において、利用者及び職員等のストレスや家族の様々な不安等に、しっかりと向き合っていかなければならないと思っています。
新型コロナウイルスの終息の見通しが全く立たない中、長期戦になるものと判断しています。私は今直面している経験は、今後の危機管理において活かすことができる、たくさんの大切な要素や課題が含まれていると考えています。
今回は自分自身や大切な人の命を守るのは、他ならぬ自分自身だということを改めて感じました。我々の普段の行動を積極的に変化させ変容していくことが大切です。手洗いやアルコール消毒の励行も、不要不急の外出を控えることも、自分自身の行動です。命を守るには、我が事としてとらえ、一人ひとりの行動の積み重ねが大切だと思いました。さらに、感染症対策で、命を守るという言葉は、自分や身近な人だけではなく、社会全体で命を守るという意味合いだと思います。自分自身や大切な人と社会全体の命を守るために、慎重な行動をとることが大切です。私たちの行動次第で手遅れを防ぎ、被害を減らすことが十分に可能であることを実感しています。そして、社会全体の感染リスクが上がらないようにすることが、自分自身の命を守ることにつながってくることを改めて認識しました。この思いは、施設における感染症対策や今後の災害等における危機管理やリスクマネジメントに通じるものと思います。
最後に、不確実さを伴う情報をどう受け止め、どう理解し、どう活用するかということの課題を改めて実感しました。実態が見えない中、施設全体が初期、初動の段階から、もしものことを想定し、迅速に、ある意味大げさに動くことに舵を取りました。大げさに動き、大げさに対応していきました。確かにそのことで様々なマイナス面が生じたことは否定できませんが、結果的には利用者の命を守る点において、現時点ではこれが功を奏したものと捉えています。(2020.4.15記)

